江戸の団扇絵

  • URLをコピーしました!
※当サイトのリンクには広告が含まれています。
※画像の左下にある「引用元」のリンクから元のファイルをご覧になることができます。

名所、役者、美人が描かれた「団扇絵」と、団扇絵が登場する西洋絵画も掲載しました。

『猫のけいこ』 天保12年(1841年) 歌川国芳
『猫のけいこ』 天保12年(1841年) 歌川国芳
目次

描かれた団扇

団扇を持つ遊女 1797年頃 喜多川歌麿 国立美術館(ブラジル)
団扇を持つ遊女 1797年頃 喜多川歌麿 国立美術館(ブラジル)

引用元:Female Figure (Courtesan Holding a Fan)

美女が素敵な団扇を持っていますね。

夏の暑い日にあおいで風を送る道具、団扇。

焼き鳥なんかの料理の時にぱたぱたやったり、欠伸をする口元を隠したり…と団扇はいろんな場面で使えます。

下は蛍狩りの様子です。

高い所を飛ぶ蛍を風圧で落とすために、柄(え)の長い団扇を使用する女性がいます。

摂津名所図会「蛍狩り」 1796年 - 1798年 丹羽 桃渓
摂津名所図会「蛍狩り」 1796年 – 1798年 丹羽 桃渓

引用元:摂津名所図会「蛍狩り」

蛍狩りに団扇を使用

蛍狩りと団扇(『大江戸虫図鑑』より)

団扇を英語で説明する

『日本伝統文化の英語表現事典』からご紹介します。

団扇:Round fan

■その起源と由来について

 扇子は日本で発案されてつくられましたが、団扇は世界各地に原型があります。飛鳥時代に大型のものが日本に伝わり、京都では中国のものをもとに奈良時代からつくられました。当時は現在の団扇の柄を長くした形のものが、高貴な人の顔を隠したり、食事を冷ましたり火をおこしたりするのに使われていたようです。竹と和紙を使ったものは室町時代に製造が始まり、江戸時代には多色刷りの役者絵や美人絵を描いたものが庶民にも広まりました。

■そのつくり方と職人技

 団扇には、和紙を張って絵や模様をつけたものと、和紙の上から柿渋を塗って仕上げたものとがあります。前者には伊勢うちわ(三重県)、雪村うちわ(茨城県)、京うちわ(京都)があり、渋うちわと呼ばれる後者は岐阜県や愛媛県が主な産地です。京うちわは、別につくった柄を紙の面に差し込む差し柄が特徴で、加飾した地紙は細く割った竹の骨によって支えられています。全国シェアの9割を占める丸亀うちわ(香川県)の特徴は、1本の細い竹をそのまま柄に使い、先端を細く割いて骨にすることです。

亀田尚己、三宮裕子、中道キャサリン(著). WANOBI 和の美(編集協力). 平成30-6-30.『日本伝統文化の英語表現事典』. 丸善出版株式会社. p.211.

広告で貰ったり扇風機にあたりながら使ったり、日常的に見てきた団扇。

大昔から存在しているのは知っていても、身近過ぎてその歴史を気にすることはありませんでした。

竹と和紙を使ったものは室町時代に製造が始まったんですね。

The folding fan was created in Japan. Round fans however are seen throughout the world. The first large round fans come to Japan in the 7th century and were made in Kyoto based on the Chinese examples. They were used for hiding the face of people with high status and for cooling food or fanning a fire. Round fans began to be made from paper and bamboo from the 14th century. In the 16th century round fans with multicolored prints and faces of famous actors or women were very popular.

亀田尚己、三宮裕子、中道キャサリン(著). WANOBI 和の美(編集協力). 平成30-6-30.『日本伝統文化の英語表現事典』. 丸善出版株式会社. p.211.

日本の伝統的なうちわの部分名称 岐阜市歴史博物館
日本の伝統的なうちわの部分名称 岐阜市歴史博物館

引用元:日本の伝統的なうちわの部分名称

海外からの友人・お客様が興味を持たれたらこちらもいかがでしょう

丸亀うちわ(公式)
あわせて読みたい

団扇絵

 夏の暑いときにあおいで風を送る団扇は、江戸時代の人々の必需品でした。扇子せんすは、踊りや婚礼の場にも使用されました。

 ともに表面には、模様などを摺りこんだ和紙を貼りますが、錦絵にしきえを用いれば絵画も楽しめる実用品になります。好みの絵に貼り代えることもできるので、需要が増え、人気絵師も手がける浮世絵版画の大きな分野となりました。

深光富士男(著). 2019-8-30. 『面白いほどよくわかる 浮世絵入門』. 河出書房新社. p.117.

新しい絵に貼りかえて何度でも楽しめるって、すっごく良いアイデアですよね。

初めて団扇絵を見たとき、「これ図案? デザイン画? これをもとにして製品を作るの?」と思ったのですが、そっか。 絵を貼りかえれば、お気に入りの団扇が爆誕というわけですね。

歌川国芳

『猫のけいこ』 天保12年(1841年) 歌川国芳
『猫のけいこ』 1841年(天保12年) 歌川国芳

引用元:『猫のけいこ』

歌川国芳による戯画。 団扇絵です。

三味線を持った師匠の着物の柄は「鈴」「小判」「目刺」「猫の足跡」(にくきゅーだ!)。 裾からはスルメ柄の裏地が覗いています。

『猫のけいこ』 天保12年(1841年) 歌川国芳
『猫のけいこ』 歌川国芳

引用元:『猫のけいこ』

団扇絵( Okyo go-atsurai-zome moku-iro ) 1852年 歌川国芳 大英博物館蔵
団扇絵 1852年 歌川国芳 大英博物館蔵

引用元:団扇絵

大英博物館fan-print

「木版画の団扇絵。青と赤の文様と桐の紋のある衣をまとい、小さな盃を持つ若い女性。」と説明がありました。

杯が小さくて、最初は気づきませんでした…。

こちらにも国芳の団扇絵「猫のすずみ」が載っています。ネコ好きの方、見てみてくださいな

葛飾北斎

団扇絵( Carp Swimming by Water Weeds ) 1831年 葛飾 北斎 クリーヴランド美術館蔵
団扇絵 1831年 葛飾北斎 クリーヴランド美術館蔵

引用元:Carp Swimming by Water Weeds

クリーヴランド美術館Carp Swimming by Water Weeds

団扇絵(信州諏訪湖 Lake Suwa in Shinano Province ) 1834年 葛飾北斎
団扇絵(信州諏訪湖) 1834年 葛飾北斎

引用元:Lake Suwa in Shinano Province

歌川広重

団扇絵( Chrysanthemums in Fan-shaped Design ) 1840年代 歌川広重 メトロポリタン美術館蔵
団扇絵 1840年代 歌川広重 メトロポリタン美術館蔵

引用元:団扇絵(MET DP121468)

メトロポリタン美術館Chrysanthemums in Fan-shaped Design

団扇絵(錦絵。東都月の三景(画帖『広重団扇絵』より) 歌川広重 国立国会図書館
団扇絵(錦絵。東都月の三景(画帖『広重団扇絵』より) 歌川広重 国立国会図書館蔵

引用元:東都月の三景

国立国会図書館デジタルコレクション東都月の三景

歌川国貞

団扇絵( Vrouw bedekt lantaarn met kimono ) 1852年 歌川国貞 アムステルダム国立美術館蔵
団扇絵 1852年 歌川国貞 アムステルダム国立美術館蔵

引用元:Vrouw bedekt lantaarn met kimono

アムステルダム国立美術館Vrouw bedekt lantaarn met kimono

団扇絵は「着物の袖で提灯を覆いながら外を見る女性。暗い庭には、石灯籠と木のそばに立つ刀を持った男性の影がある」場面。

江戸時代後期、団扇の形は横長・楕円形が主流だったそうです。

団扇絵(花揃戯場の道連 三升。錦絵画帳『花揃戯場の道連』より) 歌川国貞 国立国会図書館蔵
団扇絵(花揃戯場の道連 三升。錦絵画帳『花揃戯場の道連』より) 歌川国貞 国立国会図書館蔵

引用元:花揃戯場の道連 三升

国立国会図書館デジタルコレクション花揃戯場の道連 三升

私のお気に入り、歌川国貞の「団扇を持つ美人の団扇絵」も掲載されています

こういう巨匠たちの絵を見ると、ああ、今すぐ江戸時代に行って、有り金使って爆買いしたいとつよーく思います。

そして現代で、北斎や広重の絵でぱたぱたとあおぐ…。超贅沢。

飾られた団扇

かつて、浮世絵は、輸出される陶器の梱包などに使われて欧米に渡りました。

その素晴らしさは、ゴッホやマネら画家たち、美術品収集家たちを魅了します。

素敵なデザインの団扇は眺めても楽しいものですが、モネやマネは散らした団扇を背景に使っています。

『ラ・ジャポネーズ』 1876年 クロード・モネ

『ラ・ジャポネーズ』( La Japonaise (Camille Monet in Japanese Costume)) 1876年 クロード・モネ ボストン美術館蔵
『ラ・ジャポネーズ』 1876年 クロード・モネ ボストン美術館蔵

引用元:『ラ・ジャポネーズ』

ボストン美術館蔵La Japonaise (Camille Monet in Japanese Costume)

『団扇と婦人』 1873年 エドゥアール・マネ

『団扇と婦人』( La Dame aux éventails ) 1873年 エドゥアール・マネ オルセー美術館蔵
『団扇と婦人』 1873年 エドゥアール・マネ オルセー美術館蔵

引用元:Woman with Fans

オルセー美術館La Dame aux éventails

背景の屏風は他の作品にも使われています

描かれた浮世絵(『エミール・ゾラの肖像』他)

こちらは扇に描かれた雅宴画

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次