シュリー翼348展示室では、『ヘルマフロディトゥス像』『ヴィーナスとエロス』『三美神』など、ボルケーゼ・コレクションの有名古代彫刻が展示されていす。
シュリー翼 348展示室
※貸し出し中、修復中などで展示されていない場合もあります。美術館のサイトをご確認ください。
『アフロディテとエロス』 帝政ローマ時代
シュリー翼348展示室 , MR 369 ; N 530 ; Ma 335 Aphrodite et Éros
引用元:『アフロディテとエロス』 Jastrow
胸と恥部を隠す所作で有名な「カピトリーノのヴィーナス」像。
それと同じ仕草の本作はルーヴル美術館版「カピトリーノのヴィーナス」。
1758年に発見され、カミッロ・ボルケーゼ侯爵のコレクションに加わりました。
『ギャビーのディアナ』 帝政ローマ時代
シュリー翼348展示室 , MR 154 ; N 750 ; Ma 529 Diane de Gabies
引用元:『ギャビーのディアナ』 Marie-Lan Nguyen (user:Jastrow). CC-BY-2.5
1792年、ギャビン・ハミルトンによって発見。
ボルケーゼ侯爵のコレクションでしたが財政難から売却、1807年にルーヴル入りしています。
原作は古代ギリシャのプラクシテレスといわれ、「女神が信奉者たちから贈られたマントを留める様子」が描かれています。
2012年夏に『ギャビーのディアナ』来日
『女性像』 帝政ローマ時代
シュリー翼348展示室 , MR 102 ; N 766 ; Ma 676 statue
引用元:『アリアドネ』 Vania Teofilo CC-BY-SA-3.0
『アリアドネ』の名が付いている女性像。ローマで発見、ルーヴル入りは1807年。
『貝殻を持つニンフ』 帝政ローマ時代
シュリー翼348展示室 , MR 309 ; N 247 ; Ma 18 Nymphe à la coquille
引用元:『貝殻を持つニンフ』 Tangopaso
ルーヴル美術館の解説の、この像の「発見場所」は「イタリア(?)」となっています。
おぉ、はてな付きなんだ。何処で発見されたんでしょうね。
1807年にルーヴル入りしています。
『女性像』 帝政ローマ時代
シュリー翼348展示室 , MR 334 ; N 545 ; Ma 379 statue
イタリアで発見されました。
蝶々みたいな羽がプシュケ(プシューケー)を連想させます。
美術館の解説欄には「ニオベの少女の一種を翻案したもの」(Google翻訳)とありましたが、ニオベ―の娘から派生したプシューケーの姿ということなのでしょうかね。
Wikipedia のファイルの説明欄に、「Niobid (daughter of Niobe) restored as Psyche (personification of the soul). Marble. 」(Google翻訳:ニオビッド (ニオベの娘) がプシュケ (魂の化身) として復元されました。)とあり、この説明の方がわかり易いと思います。
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『三美神』 帝政ローマ時代
シュリー翼348展示室 , MR 211 ; N 642 ; Ma 287 Les trois Grâces
引用元:『三美神』 Sailko CC-BY-SA-3.0
1608年に発見。これもカミッロ・ボルケーゼ侯爵のコレクションだったもの。
1609年にニコラ・コルディエによって修復されました。
二コラ・コルディエ( Nicolas Cordier,1567-1612)は、イタリアで活動したロレーヌ出身の彫刻家。主に教会の依頼を受けて仕事をしていたようです。
1610年前後にシピオーネ・ボルケーゼ枢機卿の依頼で『イル・モーロ(ムーア人)』( il Moro, le Maure )、『ジプシーの少女』( La Zingarella )を制作しています。
引用元:『イル・モーロ』 Sukkoria CC-BY-SA-4.0
ドゥノン翼404展示室 , MR 303 ; MV 8411 ; Ma 6209 il Moro, le Maure
ローマで発見された帝政ローマ時代の顔と胴体を、コルディエが修復。
カミッロ・ボルケーゼ侯爵のコレクションから1808年にルーヴル入りしました。
『眠れるヘルマフロディトゥス』 帝政ローマ時代
シュリー翼348展示室 , MR 220 ; N 335 ; Ma 231.1 ; Ma 231 Hermaphrodite endormi
引用元:『眠れるヘルマフロディトゥス』 Sailko CC-BY-3.0
1618年、ローマのディオクレティアヌス帝の浴場で発見された雌雄同体の像。
胸には女性の乳房、下腹部には男性器があります。
ヘルマフロディトゥス(ヘルマプロディートス)は、美の女神アフロディーテと、伝令の神ヘルメスの間に生まれた息子です。
ニンフのサルマキスに愛されて合体してしまい、雌雄同体となってしまいました。
ヘルマフロディトゥス像が横たわるマットレスは、シピオーネ・ボルケーゼ枢機卿が天才芸術家ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ( Gian Lorenzo Bernini, 1598 – 1680)に作らせたものです。
引用元:『眠れるヘルマフロディトゥス』 Marie-Lan Nguyen
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ベルニーニはリシュリュー枢機卿の胸像も制作しています。
引用元:リシュリュー枢機卿 Sailko CC-BY-3.0
ドゥノン翼404展示室 , MR 2165 ; N 15306 Le cardinal de Richelieu (1585-1642)
ベルニーニは送られてきた絵を基にこの胸像を制作。
しかしリシュリュー枢機卿はこれを気に入らず、別の彫刻家に再度発注し直したようです。
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また、ランス別館では、教皇ピウス6世のコレクションだったヘルマフロディトゥス像も展示されています。
引用元:『眠れるヘルマフロディトゥス』 soham_pablo CC-BY-2.0
ランス別館 , MR 222 ; N 426 ; Ma 323 statue
こちらは1795年にイタリアのヴェッレトリ( Velletri )で発見されています。
『傷ついたガリア人』 帝政ローマ時代
シュリー翼348展示室 , MR 133 ; N 1339 ; Ma 324 Gaulois blessé
引用元:『傷ついたガリア人』 Marie-Lan Nguyen (user:Jastrow)
1514年頃ローマで発見。1807年にルーヴル美術館が取得しています。
タイトルは『膝をつくガリア人』『傷ついた若いガリア人』(ガリアの戦士)などとなっているかもしれません。
紀元前3世紀のペルガモンのオリジナル(ブロンズ製)にちなむ、西暦1世紀-2世紀のローマン・コピーとのことです。
『フルートを吹くサテュロス』 帝政ローマ時代
シュリー翼348展示室, (Ma 594) 、 Satyre flûteur, (Ma 595) Satyre flûteur
引用元:『フルートを吹くサテュロス』 Darafsh CC-BY-SA-3.0
左側のサテュロス(Ma 594)は西暦1世紀(50年-100年頃)の作品。
右側のサテュロス(Ma 595)は西暦2世紀(100年-200年頃)の作品。
どちらもイタリアで発見されていて、1807年にルーヴル美術館入り。
ボルケーゼ一族
枢機卿シピオーネ・ボルケーゼ( Scipione Borghese, 1577年9月1日 – 1633年10月2日)
引用元:シピオーネ・ボルゲーゼ Daderot CC-Zero
シピオーネ・ボルゲーゼは当時のローマ教皇パウルス5世の甥。
美術品が大好きで、気に入った作品を手に入れるためには手段を問わないということも…。
ちなみに、ローマ教皇パウルス5世(在位:1605年-1621年)はボルゲーゼ家の出身で、本名はカミッロ・ボルゲーゼ( Camillo Borghese )と言います。
カミッロ・フィリッポ・ルドヴィコ・ボルゲーゼ( Camillo Filippo Ludovico Borghese, 1775年7月9日-1832年5月9日)
1803年、皇帝ナポレオン・ボナパルトの妹ポーリーヌと結婚。後に別居します。
義兄ナポレオンは、ボルケーゼ家のコレクションの344点をフランスに売却するようにカミッロに強制しましたが、カミッロはエジプトで発掘された遺跡や他の作品を購入することにより再びコレクションを充実させました。(すごいよね!いいなぁ)(参考:Camillo II Borghese(Wikipedia))
カピトリーノのヴィーナス カピトリーノ美術館蔵
引用元:カピトリーノのヴィーナス José Luiz uploads CC-BY-SA-4.0
手で前を隠し困惑気な表情を浮かべる女神。
古代ギリシャの彫刻家プラクシテレスが制作した『クニドスのヴィーナス』像から派生した、「恥じらいのヴィーナス」の型です。『メディチのヴィーナス』も同じタイプに分類されます。
紀元前4世紀に発行された硬貨の図案はこのような感じでした。
シュリー翼348展示室の『ヴェルサイユのディアナ』について
シュリー翼348展示室に展示されている女神たち
ニオベ―の話も載っています。薄いけど、彫像の写真も豊富。勉強になります