シュリー翼627展示室のマリー・アントワネットのセーヴル製胸像、旅行用カバンを掲載しています。
シュリー翼627展示室
※貸し出し中、修復中などで展示されていない場合もあります。美術館のサイトをご確認ください。
マリー・アントワネットの胸像 1782年
シュリー翼627展示室 (OA 10898) Buste de Marie-Antoinette
引用元:マリー・アントワネットの胸像 Sailko CC-BY-3.0
フランスの彫刻家ルイ=シモン・ボワゾ( Louis-Simon Boizot, 1743年 – 1809年)原作の、セーヴル磁器製の胸像です。
モデルはルイ16世妃マリー・アントワネット(1755年 – 1793年)。
1773年からセーヴル製作所の彫刻工房の監督を務めていたボワゾは、マリー・アントワネットの胸像の雛型も制作しています。
本作について、『ルーヴル美術館展ーフランス宮廷の美ー』(2008)の解説では、
1781年に外務局のために制作され、同年のサロンに出品された大理石像(現在、ルーヴル美術館が所蔵)のヴァリアント(異作)と思われる。サロンに出品された作品と同じく、王妃は4分の3正面を向いた姿で表されており、襟ぐりの大きなドレスを身に着け、髪はふっくらと結い上げられ、たっぷりした巻き毛が首に垂れている。
『ルーヴル美術館展ーフランス宮廷の美ー』(2008). p.163.
とあります。
文中に出てきた、1781年のサロンに出品された大理石の胸像を見ると、顔の印象が随分異なっています。
引用元:マリー・アントワネットの胸像 Marie-Lan Nguyen (2006)
GALERIE DES GRANDS HOMMES (EX-SALLE 29) (RF 4515) Marie-Antoinette (1755-1793) reine de France
大理石像よりセーヴル製作所の像の方が「鼻の輪郭が和らげられ、眼も小さく」なっています。
(マリー・アントワネットの絵画や彫刻を見るとき、つい「ハプスブルク家の顔かたちの特徴」を鼻や顎に探してしまいませんか。(私だけ?)
この大理石像、かなり実物に近いんじゃないのかなと思うのですが…。どうでしょうかね)
このような変更は、1781年の大理石像に向けられた批判の結果と見るべきだろうか。とりわけディドロは、この大理石像を「形は貧弱で、目には魂が宿っていない」と評した。磁器による胸像は大理石像の尊大な印象を和らげようともしたようである。その結果、王妃の姿はより親密で平凡なものとなり、ある種の無味乾燥さに非難が向けられたのである。
『ルーヴル美術館展ーフランス宮廷の美ー』(2008). p.163.
ドゥニ・ディドロ( Denis Diderot, 1713年 – 1784年)は、フランスの哲学者で作家。『百科全書』を編纂しました。
同じギャラリーにある彫刻家パジューのルイ16世胸像
シュリー翼627展示室 (MR 2653 ; N 15799) Louis XVI (1754-1793) roi de France
マリー・アントワネットの旅行用携行品入れ 1788年
シュリー翼627展示室 (OA 9594) Nécessaire de voyage dit de Marie Antoinette
引用元:マリー・アントワネットの旅行用携行品入れ Tangopaso
公式サイトの解説欄に四人の職人さんの名前が掲載されています。
ジャン=ピエール・シャルプナ( Jean-Pierre Charpenat 金銀細工)
フランソワ・ジュベール( François Joubert 金銀細工)
ジャン=シャルル・ルチアン( Jean-Charles Lethien ナイフ)
ジャン=フィリップ・パルマ( Jean-Philippe Palma 装飾家具)
王妃マリー・アントワネットの注文で作られた旅行用カバン。マホガニー製です。
付属品を含むその重量は50kg。長さ 82cm、幅 48.5cm、高さ 19cm。
ほとんどの品物にマリー・アントワネットのモノグラム「MA」が付けられています。
25種の金銀細工とガラスの製品の多くには、金銀細工師シャルプナの刻印があります。
化粧道具のボトル類や小型コンロ、ココアポット、洗面器、裁縫道具等お役立ちグッズが入っていて、出国した後もすぐ「いつも通り」の生活ができそうです。
『美術品でたどるマリー・アントワネットの生涯』(NHK出版新書)では、「「ヴァレンヌ逃亡」の際、携行したと思われる大型旅行カバン。」との説明があります。
Wikipediaにもこのカバンに関するページがあります
磁器や銀製品など、すべて詰め込んだら50㎏の重さって、大体人間ひとり分ですねえ。楽しいピクニックならいいけど、逃げるときに持っていくとなると、やっぱり重いかな、と感じてしまう。
王妃の携行品入れは、このルーヴル美術館以外にも二点存在しているのだそうです。
『ルーヴル美術館展ーフランス宮廷の美ー』(2008)によると、
少し小さいけれど、本作に近いものが南仏のグラース美術館に。
小間使いのオギエ夫人に贈った、もっと簡素なものが個人の所有。
ルーヴル美術館の収蔵品は1794年からイタリアにあり、もうひとつの携行品入れが同じ頃パリにあったことが、革命政府の公文書から判っているとのこと。
マリー・アントワネットは大きな旅行用カバンをテュイルリー宮に所有していました。
1791年6月の国王一家の国外逃亡の計画を念頭において、王妃は出国後も自由に使うことができるように、それを姉妹の住むブリュッセルに届けさせたいと思っていた。しかしながら、このように豪華な品物を手放すことで疑惑を招くことを恐れて、姉妹への贈り物にするという口実を設けて、その複製を作らせて、国外に送ることを決めた。
『ルーヴル美術館展ーフランス宮廷の美ー』(2008). p.222.
その後、国王一家は国外への逃亡をはかりましたが、失敗し、捕えられます。(中野京子氏の著書で有名な「ヴァレンヌ逃亡」事件)
持っていたであろう携行品入れはどうなったのでしょうか。
『ルーヴル美術館展ーフランス宮廷の美ー』(2008)では、
第一の、つまりルーヴル美術館が所蔵する携行品入れは、第二の携行品入れが予定通りに完成しなかったために、国王一家が逃亡する前にパリを離れたものであり、本来は王妃が携えることになっていた第二のものが、今日グラース美術館に収蔵されているのではないかと思われる。
『ルーヴル美術館展ーフランス宮廷の美ー』(2008). p.222.
ルーヴル美術館の収蔵品は国王たちが逃亡する以前に「パリを離れ」ていて(おかげで破損・破壊、盗難、散逸などを避けることができた)、予定から遅れて完成した複製品が「王妃が携えることになっていた」ものということ?
ちなみに、Wikipediaでは、「女王は、国王夫妻の国外逃亡の噂を遠ざけることを願い、 このキットを妹のオーストリア総督マリー・クリスティーヌ(オランダ総督)に送った。」(Google翻訳)となっています。
(ここに出てくる「キット」とは、この携行品入れ。
またマリー・クリスティーヌは「妹」と訳されていますが、マリア・クリスティーナ・フォン・エスターライヒ (1742-1798)の方が「姉」です)
例え結末を知っていても、パリ脱出の場面ではドキドキします
旅行用カバンが見開きで掲載されています。その他の美術品もとても素敵です
マリー・アントワネットの旅行用携行品(シュガーポット)
Pot à sucre, faisant partie du nécessaire de Marie-Antoinette (OA 9594 29)
Wikipediaのページに「カップ」とありましたが、美術館のサイトには「シュガーポット」とありました。把手も付いているので、シュガーポットかと。
マリー・アントワネットの旅行用携行品(ベル)
(OA 9594 9) Nécessaire de Marie-Antoinette
ジャン=ピエール・シャルプナ制作。高さ 11㎝、幅 6.5㎝。MAのモノグラム入り。
「普通の」ワインクーラー 1783年
シュリー翼627展示室(OA 11927) Seau à bouteille “ordinaire” en première grandeur
引用元:「普通の」ワインクーラー Shonagon
「普通の」オイルポット 1784年
シュリー翼627展示室 (OA 11979) Pot à oille “ordinaire” (voir plateau OA 11980)
引用元:「普通の」オイルポット Shonagon
1784年にマリー・アントワネットがセーヴル製作所に注文した「極彩色のフリーズ」のセルヴィスだそうです。素敵ですね。
OA11979 のトレイ
シュリー翼627展示室 (OA 11980) Plateau du pot à oille “ordinaire” OA 11979
『メランコリー』 1774年
シュリー翼627展示室 (OA 11253) La Mélancolie
高さ 72cm、幅 34.5cm、奥行き 22cm。
ポンパドゥール夫人やデュ・バリー夫人の注文で作品を制作したエティエンヌ・モーリス・ファルコネは、セーヴル製作所におけるボワゾの前任者です。
引用元:『クピド』 Ricardo André Frantz (User:Tetraktys), 2007 CC-BY-SA-3.0
リシュリュー翼222展示室 L’Amour menaçant
リシュリュー翼222展示室で観られるファルコネの作品一覧 ファルコネの『クピド』を観るならリシュリュー翼
他の美術館にあるクピド像も紹介 ナイショのしぐさのキューピッド(ファルコネ作)
彫刻家パジューによるデュ・バリー夫人の胸像