ファルコネがポンパドゥール夫人のために制作した『クピド』像はリシュリュー翼にあります。
リシュリュー翼222展示室『クピド』『音楽』『浴女』『ピグマリオンとガラテア』
※貸し出し中、修復中などで展示されていない場合もあります。美術館のサイトをご確認ください。
『クピド』 1757年頃
リシュリュー翼222展示室 (RF 296) L’Amour menaçant
引用元:『クピド』 Ricardo André Frantz (User:Tetraktys), 2007 CC-BY-SA-3.0
「秘密だよ」と言っているのか、それとも鑑賞する私たちに沈黙を強いているのか。
愛らしくも謎めいたクピド(キューピッド、アムール)の仕草です。
この像は、フランス国王ルイ15世の公式寵姫だったポンパドゥール侯爵夫人のために制作されました。
引用元:『ポンパドゥール侯爵夫人』
シュリー翼611展示室(RF 2142) La Marquise de Pompadour (1721-1764).
関連記事 ルーヴル美術館にある『ポンパドゥール侯爵夫人』の肖像(ブーシェ作)
『NHKルーブル美術館Ⅵ フランス芸術の華 ルイ王朝時代』では、ファルコネのクピドについて、
どこかいたずらっ子のような笑いを浮かべながら、意味ありげに唇に指をあてて座るこのキューピッドの像は、微妙な恋の駆け引きや愛の手管の洗練さを好んだこの時代の趣味をよく反映するものである。
高階秀爾(監修・責任編集). S61-3-20. 『NHKルーブル美術館Ⅵ フランス芸術の華 ルイ王朝時代』. 日本放送出版協会. p.127.
との記述があります。
世の中は軽妙洒脱、軽やかで享楽的なロココ文化の只中に在りました。
このファルコネの作品に似た彫刻を、ロココを代表する画家フラゴナールの『ぶらんこ』でも見ることができます。
ピンクのドレスの女性がぽーんと飛ばすミュールの先に、唇に手を当てる天使像が。
引用元:『ぶらんこ』
ドレスの中を見てしまい、超嬉しそうな男性と、ぶらんこに乗る愛人。そしてぶらんこを押す愛人の夫。
不倫、三角関係と、秘密の恋が進行中です。
『音楽』 1752年
リシュリュー翼222展示室 (MR 1963) La Musique
引用元:『音楽』
ポンパドゥール夫人から、ベルヴュー城のために注文された作品。
ランベール=シジスベール・アダムの『詩』と対になるものとして、「城の前庭の龕(がん)」に置かれた、とのことです。
ランベール=シジスベール・アダム( Lambert-Sigisbert Adam, 1700年 – 1759年、別名 Adam le aîné )はフランスの彫刻家です。
弟は彫刻家ニコラ=セバスティン・アダム( Nicolas-Sébastien Adam, 1705年 – 1778年)で、兄と区別するため二コラ=セバスティアンは「Adam le Jeune 若いほうのアダム」と呼ばれます。
引用元:『詩』
リシュリュー翼222展示室 (MR1742) La Poésie
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『浴女』 1757年
リシュリュー翼222展示室 (MR 1846) Baigneuse
ポンパドゥール夫人が亡くなった後ルイ15世の愛人となったデュ・バリー夫人の、ルーヴシエンヌにおけるコレクション。
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『ピグマリオンとガラテア』 1761年
リシュリュー翼222展示室 (RF 2001) Pygmalion au pied de sa statue qui s’anime
引用元:『ピグマリオンとガラテア』 VladoubidoOo CC-BY-SA-4.0
生命を吹き込まれた像と、その足もとで膝を着くピグマリオン。
同じ主題の作品がエルミタージュ美術館他、ルーヴル美術館にも収められています。
シュリー翼623展示室 (OA 10000) Pygmalion et Galathée
台座にはこのような文章が。 サイトから引用します。
SI PIGMALION LA FORMA,
SI LE CIEL ANIMA SON ETRE,
L’AMOUR FIT PLUS, IL L’ENFLAMMA ;
SANS LUI QUE SERVIROIT DE NAITRE ?
(Google翻訳:
ピグマリオンが彼女を形成したなら、
天国が彼女の存在をアニメーション化したなら、
愛はもっと増え、彼はそれに点火しました。
彼がいなかったら、生まれてきた意味は何でしょうか?)
『ピグマリオンとガラテア』石膏ヴァージョンは現在展示されていません(2024年6月)
, MOUL 1981.13 Pygmalion et Galatée
『クロトンのミロン』 1754年
リシュリュー翼219展示室 (MR 1847) Milon de Crotone
引用元:『クロトンのミロン』 Pierre-Yves Beaudouin CC-BY-SA-4.0
1745年のサロン。
引きちぎった木に手が挟まり、動けないミロンに襲いかかる狼、の場面。
狼がライオンに見えるんですが…。たぶんライオン?
17世紀の彫刻家ピュジェ( Puget, Pierre )の『クロトンのミロン』は狼をライオンに変更しています。その路線?かな?
ピュジェ作 , リシュリュー翼105展示室 Milon de Crotone
『彫刻の精霊』 1745年
リシュリュー翼219展示室 (RFML.SC.2020.4.1) Le Génie de la Sculpture
高さ 34.5 cm のテラコッタ製の小像。
その他
『メランコリー』 1774年
シュリー翼627展示室 (OA 11253) La Mélancolie
シュリー翼627展示室マリー・アントワネットのギャラリーで鑑賞できます ボワゾによるマリー・アントワネットの胸像(シュリー翼)
ファルコネに帰属する作品。三美神の、文字盤が回転する時計
ファルコネ原作のセーヴル製作品
ファルコネの作品とされている大理石の像『フローラ』。現在展示されていません(2024年7月)
『眠るヴィーナス』はブロンズ製。現在展示されていません(2024年7月)
, CH B 160 ; GML 8001 Venus endormie et l’amour
YouTube で『クピド』も観られます
エティエンヌ=モーリス・ファルコネ( Étienne Maurice Falconet, 1716年12月1日 – 1791年1月24日 )
メトロポリタン美術館:Portrait of Étienne Maurice Falconet (1716–1791)
パリに生まれたファルコネは、彫刻家ジャン=バティスト・ルモワーヌ(子)に師事。
その後、同じく彫刻家のジャン=バティスト・ピガール、オーギュスタン・バジュー、画家フランソワ・ブーシェらと出会います。
ポンパドゥール夫人によって重用されたフランソワ・ブーシェは、絵画アカデミーの会長やゴブラン製作所の所長を務め、ポンパドゥール侯爵夫人が携わったセーヴル磁器の下絵を描きました。
ファルコネは、ポンパドゥール夫人が後援するセーヴル王立磁器製作所の、彫刻工房の責任者に就任しています。
ファルコネがポンパドゥール侯爵夫人のために制作した『クピド』は評判となります。
1766年にはディドロ(『百科全書』編纂)らの推薦でロシアのエカテリーナ2世の元を訪れ、ピョートル大帝の騎馬像を制作しました。
ロシアに滞在した後フランスに戻り、1791年にパリで亡くなりました。
ブーシェによるポンパドゥール夫人の肖像画
セーヴル製のマリー・アントワネット胸像。ボワゾはファルコネの後任者
ファルコネのクピド像も掲載されています。著者の池上英洋氏はこの「ヒミツ」の仕草についても言及されておられます。神話や絵画が描かれた当時の文化風習もわかりやすく解説されています。
フラゴナールの『ぶらんこ』など
セーヴル焼きも勿論載っています