『若き殉教の娘』、英国史における出来事を描いた『若きイングラド王エドワード5世と弟のヨーク公リチャード』『イングラド女王エリザベス1世の死』など、ポール・ドラローシュの作品はドゥノン翼にあります。
ドゥノン翼701展示室
『若き殉教の娘』( La Jeune Martyre ) 1865年
ドゥノン翼701展示室 , RF 1038 La Jeune Martyre
引用元:『若き殉教の娘』
両手を縛られ、川を流れていく若い女性。
皇帝ディオクレティアヌスの治世で、改宗を拒み殉教したキリスト教徒を描いた、ポール・ドラローシュ最後の作品です。
昔々のルーヴル初訪問では、とても心惹かれた作品でした。
あの頃はねぇ、この絵の作者も背景もわからなくてですねぇ…。ゲットした絵葉書を頼りに、後からいろいろ調べましたねぇ。
そんなかつての自分に、美術館に行く前に本などである程度予習しておけと、今の私なら言いますね。ええ。
なんで手が縛られているのか。
この物語の時代背景は?
とか、知らないで観るのと、知っていて観るのでは、見方が全然違いますから。
書籍『ルーヴル美術館ベスト100』でもちゃんと紹介されています
『イングラド女王エリザベス1世の死』( Mort d’Élisabeth, reine d’Angleterre, en 1603 ) 1828年
ドゥノン翼701展示室 , INV 3836 ; C 248 Mort d’Élisabeth, reine d’Angleterre, en 1603
イングランド女王エリザベス1世は、1603年3月24日に69歳で亡くなりました。
健康状態が悪化したエリザベスは3月に入ってからは薬や食事も受けつけず、ベッドではなくクッションの上に身を横たえていたと言われています。(参考:『エリザベス1世』 講談社現代新書)
本作が描かれた頃、フランスではイギリスブームが起こっていました。
ドラローシュは、『若きイングラド王エドワード5世と弟のヨーク公リチャード』(1830年、ルーヴル美術館蔵)、『クロムウェルと棺の中のチャールズ1世』(1831年、ハンブルク美術館蔵)、『レディ・ジェーン・グレイの処刑』(1833年、ナショナル・ギャラリー蔵)など、英国史にヒントを得た作品を描いています。
ドゥノン翼700展示室
『若きイングラド王エドワード5世と弟のヨーク公リチャード』( Édouard V, roi mineur d’Angleterre, et Richard, duc d’York, son frère puîné (1483), dit Les enfants d’Édouard ) 1830年
ドゥノン翼700展示室 , INV 3834 ; LP 15 Édouard V, roi mineur d’Angleterre, et Richard, duc d’York, son frère puîné (1483), dit Les enfants d’Édouard
引用元:『ロンドン塔の若き王と王子』
1483年、エドワード5世とその弟ヨーク公リチャードは、ロンドン塔内で忽然と姿を消しました。
1827年に旅行でロンドン塔を訪れたドラローシュは、その出来事にインスピレーションを得て本作を制作。
囚われたふたりの不安や緊張感が伝わってくるようですね。
『レディ・ジェーンの処刑』の習作
英国ナショナル・ギャラリー所蔵の傑作『レディ・ジェーン・グレイの処刑』。
在位わずか9日間の女王ジェーン・グレイについては 1553年、9日間女王レディ・ジェーン・グレイの処刑
この習作が大英博物館、ホイットワース美術館、ルーヴル美術館にあります。
※作品はグラフィックアーツ相談室にて予約制でご覧いただけます。
, RF 1727, Recto Etude pour ‘L’Exécution de Lady Jane Grey’
引用元:『レディ・ジェーンの処刑』の習作
, RF 35132, Recto Etude pour ‘L’Exécution de Lady Jane Grey’
引用元:『レディ・ジェーンの処刑』の習作
, RF 35133, Recto Etude pour ‘L’Exécution de Lady Jane Grey’
, RF 35134, Recto Etude pour l’Exécution de Jane Grey
『若き殉教の娘』の習作
※作品はグラフィックアーツ相談室にて予約制でご覧いただけます。
, RF 368, Recto Etude pour La Jeune Martyre
, RF 34820, Recto Deux bras croisés
, RF 34815, Recto Femme étendue sur le dos, les mains liées sur la poitrine
, RF 34816, Recto Etude de composition pour ‘La Jeune Martyre Chrétienne’
, RF 34818, Recto Croquis de deux mains liées, tenant une croix
肖像画
ナルシス=アシル・ド・サルヴァンディ( Le comte Narcisse-Achille de Salvandy ( 1795-1856))の肖像 1800年から1900年の間
ドゥノン翼702展示室 , RF 2489 ; INV 20073 Le comte Narcisse-Achille de Salvandy ( 1795-1856)
フランスの政治家。
写真みたいな肖像画ですね。
プルタレス=ゴルジェ伯爵ジェームズ・アレクサンドルの肖像( Portrait de James-Alexandre, comte de Pourtalès Gorgier (1776-1855) ) 1846年
シュリー翼943展示室 , RF 1998 1 Portrait de James-Alexandre, comte de Pourtalès Gorgier (1776-1855)
引用元:Portrait of James-Alexandre, Comte de Pourtalès-Gorgier
作品は伯爵家の所有でしたが、1997年に相続税の納税のため贈与されたそうです。
『アルプスを越えるボナパルト』( Bonaparte franchissant les Alpes ) 1848年 ポール・ドラローシュ
ランス別館 , RF 1982 75 Bonaparte franchissant les Alpes
引用元:『アルプスを越えるボナパルト』
ナポレオンと言えば、ダヴィッドの『サン・ベルナール峠を越えるナポレオン』のように、勇ましく馬で進軍…というイメージがあります。
しかし、このドラローシュの絵には「先頭切って駆け抜ける」ナポレオンもその馬もいません。
ガイド?の男性に付き添われ、ラバに乗って歩を進めて行くナポレオン。
実際はこうだったんだろうなとか、これに近かったんだろうと感じてしまいます。
ポール・ドラローシュ( Paul Delaroche, 1797年7月17日 – 1856年11月4日)
引用元:自画像
まだ59歳という年齢で亡くなってしまったドラローシュ。
パリ生まれで、ドラクロワ、ジェリコーといったロマン主義の画家たちと交流しました。
生前はドラクロワに匹敵するほどの人気だったそうですが、没後は「忘れられた存在」になったそうです。
私が絵葉書だけの情報を頼りに関連書籍を探していたとき、なかなか「これだ!」というものに辿り着けなかったのもそのせいなのかなあ。
今ならルーヴル美術館関連本もいろいろ出ているし、ネットでも探せるから、良い時代になったものだと思います。
コラムでドラローシュ作品を紹介
もちろん「一生に一度は見たいルーヴル美術館ベスト100」入り