梅を楽しむ万葉びとの宴

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730年、大伴旅人の邸で行われた宴会。紐解けば、今でも良い梅の香りが漂ってきそうです。

庭の梅(2014年 筆者撮影)
庭の梅(2014年 筆者撮影)
目次

大伴旅人の歌

天平2年正月13日(730年、太陽暦2月8日頃)。

大宰府の大伴旅人邸で、宴が開かれました。

この「観梅の会」の主客は32人。その出席者の中には山上憶良もいました。


宴では庭に咲いた梅の花を題材に、歌を一首ずつ詠み合います。

旅人が書いたのでは、と言われている漢文の序文、

時は初春の良い月で、外気は心地よく風は和らいでいる。梅は鏡の前の白粉のような花を咲かせ、蘭は匂い袋のような良い香りを漂わせている。

中嶋真也(著). 『コレクション日本歌人選041 大伴旅人』. 笠間書院.

今にも梅や蘭の芳香が漂って来そうです。

このときの宴会の様子を、公益財団法人 古都大宰府保存協会 様のサイトで博多人形による再現で見ることができます。

大宰府展示館

ほんとにこんな感じだったのかなー。梅の花の下で行われる宴が、実に楽しそうです。

旅人の、

わが園に 梅の花散る 久方の 天より雪の 流れ来るかも

 (私の家の庭に梅の花が散っています。久方の天空から雪が流れ来ているのでしょうか)(『コレクション日本歌人選041 大伴旅人』)

この英訳が、リービ英雄氏の『英語で読む万葉集』ではこのように。

Plum blossoms fall
and scatter in my garden;
is this snow come streaming
from the distant heavens?

リービ英雄(著). 『英語で読む万葉集』. 岩波新書.

こちらも美しいですね。

出席していた山上憶良は、

春さればまづ咲くやどの梅の花ひとり見つつや春日(はるひ)暮らさむ

(春が訪れると、まず最初に咲く庭の梅の花。その梅の花を、わたし一人で見ながら、春の日を過ごすのだろうか)

(辰巳正明(著). 『コレクション日本歌人選 002 山上憶良』. 笠間書院.)

本来なら家族と共に、春の訪れを告げる梅の花を見るところだったのに、独りで観るという寂しさを詠んでいます。

しかし、これは憶良個人の思いだけではなく、「この宴会の主旨がそこにあり、会に参加した全員の心を代弁したものである」(『コレクション日本歌人選 002 山上憶良』)

宴を楽しみながらも、その場にいる誰もが望郷の思いを抱えて花を眺めていたのでしょう。

その心情を思うとせつないものがありますね。

『万葉びとの宴』 第三章「天平知識人たちの雅宴」から

この時代に、この宴に、本当に32人ものひとが参加したのだろうか、と実は思っていました。

もう千年以上も昔のことなので、証明するのもなかなか大変だよなあ、と思います。

まあ、参加していた、と考える方が浪漫がある気がするので、個人的には「あった」と考えています。

上野先生のご考察、解説はたいへん説得力があります。 ぜひお読みください

文化史本ファンの私が気になるのはこれですね。「かざし」(p.67)の話。

まず、上野先生による、筑後守葛井大夫の歌の現代語訳からどうぞ。

「梅の花は 今が盛りでございます

皆の衆 挿頭かざしにしようぞ

今が盛りの この花を!」

綺麗な歌。 今にも香りが漂ってきそうです。

「かざし」は「かんざし」の語源となる言葉で、「髪挿」(かみさし)のこと。したがって、梅の花を髪にしましょうということである。これは、当時の宴会の趣向の一つで、季節の花々を参会者が髪につけて遊ぶということがあった。この植物を「かざし」にする遊びには、二つの楽しみがある。なんといっても、その季節を謳歌しているわけだから、風流であると同時に参会者に連帯感が生まれるのである。同じものを持ったり、着たりするだけだが、簡単なものでは、タスキやハチマキを挙げることができよう。当然、季節の草花でもよいわけだ。もう一つは、同じものを身に着けると、逆に個性が際立つことがある。「妙に似合っている人」「違和感ある人」「晴れやかに遊ぶ人」「恥ずかしがる人」などなど、皆違っておもしろいのだ。

上野 誠. 2014-4-20. 『万葉びとの宴』. 講談社現代新書. pp.68-69.

リアル梅の花のかんざしも良いですが、季節の花を愛で、酒を飲み、素敵な歌を詠む万葉びとのセンスが素敵です。

現代のミニマリスト・山上が、奈良時代へタイムスリップし、役人の小野老、エライひと・大伴旅人と出会います。奈良時代に行ってみたくなるマンガ。

庭の梅(2013年 筆者撮影)
庭の梅(2013年 筆者撮影)

道に落ちていた梅の花を古伊万里の器に入れてみました。「花見酒」の真似事です。

万葉集を英語で説明するなら

「万葉集って何ですか?」と訊かれて英語で答えるなら、この長さならなんとか暗記できる、かも。

万葉集は, 8世紀に編集された4500首以上の詩歌から成る, 日本に現存する最初で最古の詩選集である。

【英訳】

Manyoshu is the first and oldest existing anthology consisting of over 4,500 poems, which was compiled in the eighth century.

植田一三, 上田敏子, 山中敏彦(著). 2017-6-30 第5刷発行. 『英語で説明する日本の文化 必須表現 グループ 100』. 語研. p.6.

「8世紀なんて大昔に、こんなすごいものが編さんされたんですよ」って、先方にしっかり伝わって欲しいですね。

『カラー版 英語で紹介する日本事典』の「短歌」( Tanka : short poem of 31 syllables )からも引用します。

 短歌は五音・七音・五音・七音・七音の五句から成る定型詩です。8世紀ごろに編さんされたといわれている『万葉集』が短歌の原点で、当時は長歌や仏足石歌ぶっそくせきかなどの長い歌もありましたが、次第に和歌といえば短歌を指すようになりました。テーマは恋愛、日常生活、社会問題などさまざまで、31音の枠を越えて言外に壮大なイメージを詠み込むのがよい歌とされています。

堀口佐知子(監修). 2013-6-30 第4版発行. 『カラー版 英語で紹介する日本事典』. ナツメ社. p.224.

Tanka is a fixed form of verse made of words adding up to 31 syllables, with each verse divided into 5, 7, 5, 7, 7 syllables respectively. The Manyōshū, the oldest existing collection of Japanese poetry, which is said to have been compiled around the 8th century, is the starting point of tanka. In those days there were also longer poems such as chōka (long poem), and bussokusekika (poems inscribed beside stone Buddha foot monuments), but gradually when one spoke of waka they came refer to tanka. There are various themes in tanka such as love, daily life, and social problems, and it is considered a good poem when one goes beyond the limits of 31 syllables and implies a grand images by reading such images into the poems.

堀口佐知子(監修). 2013-6-30 第4版発行. 『カラー版 英語で紹介する日本事典』. ナツメ社. p.224.

仏足石歌をチェック

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