神話のクライマックスの場面『アモールのキスで目覚めるプシュケ』(カノーヴァ作)解説

  • URLをコピーしました!

愛するアモールに手を伸ばす、その一瞬を切り取ったカノ―ヴァの傑作『アモールのキスで目覚めるプシュケ』。ルーヴル美術館内の展示風景が見られる動画もご紹介しています。

『アモールとプシュケ(アモールのキスで目覚めるプシュケ)』( Psyché ranimée par le baiser de l'Amour ) 1793年 アントニオ・カノーヴァ ルーヴル美術館蔵
『アモールとプシュケ(アモールのキスで目覚めるプシュケ)』( Psyché ranimée par le baiser de l’Amour ) 1793年 アントニオ・カノーヴァ ルーヴル美術館蔵

画像の上でクリックまたはタップすると大きい画像が出ます。また、画像の左下にある「引用元」のリンクをクリックしていただければ、元のファイルをご覧になることができます。「引用元」の表示が無いものは、この記事内に掲載したpublic domain の元ファイルから、解説のために必要な部分を拡大し、切り抜いたものです。

目次

『アモールとプシュケ(アモールのキスで目覚めるプシュケ)』( Psyché ranimée par le baiser de l’Amour ) 1793年 アントニオ・カノーヴァ

『アモールとプシュケ(アモールのキスで目覚めるプシュケ)』( Psyché ranimée par le baiser de l'Amour ) 1793年 アントニオ・カノーヴァ ルーヴル美術館蔵
『アモールとプシュケ(アモールのキスで目覚めるプシュケ)』 1793年 アントニオ・カノーヴァ ルーヴル美術館蔵

引用元:『アモールとプシュケ』 Jean-Pol GRANDMONT CC-BY-4.0

ルーヴル美術館公式サイト(お出掛け前には最新状況をご確認ください)

王女プシュケの美しさは、美の女神ウェヌス(ギリシア神話のアプロディーテー、ヴィーナス)でさえも嫉妬するほどでした。

ウェヌスは息子のアモールに命じ、プシュケを卑しい男と恋をさせようとします。

しかしアモールは誤って、矢で自らを傷付けてしまいました。

プシュケに恋をしたアモールは彼女をさらって自分の宮殿に連れてきました。

そしてプシュケに、「私の正体を、決して見てはいけない」と約束させて結ばれます。

夫アモールと幸せに暮らしていたプシュケでしたが、その生活を妬んだ姉たちにそそのかされ、約束を破って夫の正体を見てしまいます。

妻の裏切りに怒って飛び去ったアモールを追って、プシュケの旅が始まりました。

助けを借りてウェヌスの出す無理難題を解決し、最後に、冥界から「永遠の美」が入った小箱を持ち帰ります。

しかし「開けてはいけない」という警告を受けていたにも関わらず、プシュケはその小箱を開けてしまいました。

小箱の「冥界の眠り」に誘われ、眠りに落ちるプシュケ。

眠り続けるプシュケの前に、アモールが姿を現します。

カノ―ヴァは、この物語のクライマックスの場面である、アモールの口付けによって目覚めるプシュケの姿を作品にしています。

絶妙な構図で愛の場面を再現

2人の腕は8の字のように絡み合い、口づけする瞬間の恋人たちの顔に視線を集中させている。軽やかに重なり合う身体を安定感のある山型で描くなど、他に類を見ない構図は、正面から鑑賞したときのバランスを計算したものだ。

大友義博(監修). 2014-10-12. TJMOOK 『一生に一度は見たい ルーヴル美術館BEST100』. 宝島社. p.93.

しなやかに絡み合う腕が大理石でできているなんて、わかっていても信じられない思いです。

『アモールとプシュケ』 1793年 アントニオ・カノ―ヴァ ルーヴル美術館蔵
『アモールとプシュケ』 アントニオ・カノ―ヴァ

引用元:『アモールとプシュケ』 DiraDira CC-BY-2.0

やさしく添えられた指も実に繊細ですね。

V字型に開かれた翼の先端まで美しく、作品に動きを与えています。

この作品は、「愛」(アモール)と「魂」(プシュケ)の結合の瞬間をかたちにしたものなのです。

物語では、神々の仲間入りをしたプシュケとアモールの間には娘「喜悦」(ウォルプタス)が生まれます。

『アモールとプシュケ』 1793年 アントニオ・カノ―ヴァ ルーヴル美術館蔵
『アモールとプシュケ』 アントニオ・カノ―ヴァ

引用元:『アモールとプシュケ』 Joseph Kranak CC-BY-2.0

『アモールとプシュケ』 アントニオ・カノ―ヴァ
『アモールとプシュケ』 アントニオ・カノ―ヴァ

引用元:『アモールとプシュケ』 Mak Thorpe  CC-BY-SA-2.5

『アモールとプシュケ(アモールのキスで目覚めるプシュケ)』( Psyché ranimée par le baiser de l'Amour ) 1793年 アントニオ・カノーヴァ
『アモールとプシュケ』 アントニオ・カノ―ヴァ

引用元:『アモールとプシュケ』 sailko   CC-BY-2.5

『アモールとプシュケ(アモールのキスで目覚めるプシュケ)』( Psyché ranimée par le baiser de l'Amour ) 1793年 アントニオ・カノーヴァ
『アモールとプシュケ』 アントニオ・カノ―ヴァ

引用元:『アモールとプシュケ』 Sailko  CC-BY-3.0

『アモールとプシュケ』 1793年 アントニオ・カノ―ヴァ ルーヴル美術館蔵
『アモールとプシュケ』 アントニオ・カノ―ヴァ

引用元:『アモールとプシュケ』 Kimberly Vardeman CC-BY-2.0

翼が透けてますよ!

プシュケの表情

上からはなかなか見ることができないプシュケの顔。

やはり美しく、喜びにあふれた表情です。

『アモールとプシュケ』 1793年 アントニオ・カノ―ヴァ ルーヴル美術館蔵
『アモールとプシュケ』 アントニオ・カノ―ヴァ

引用元:ルーヴル美術館『アモールとプシュケ』

必見!展示風景の動画( youtube のおススメ動画『 Au Louvre ! Psyché ranimée par le baiser de l’Amour 』)

『 Au Louvre ! Psyché ranimée par le baiser de l’Amour 』

Musée du Louvre 様による短い動画ですが、その場で観ている雰囲気に一瞬浸れます。

上から撮ってもいるので、プシュケの顔も見られますよ(≧▽≦)。

大理石の像が軽やかに見えて、今にも動き出しそうです。必見です!

アントニオ・カノーヴァ( Antonio Canova, 1757年11月1日-1822年10月13日)

カノ―ヴァ自画像 1790年 ウフィツィ美術館蔵
カノ―ヴァ自画像 1790年 ウフィツィ美術館蔵

引用元:カノ―ヴァ自画像

イタリアの彫刻家・アントニオ・カノーヴァは、新古典主義芸術をするひとりです。

アントニオ・カノヴァとも表記されます。

多くの優れた彫刻を生み出しましたが、ナポレオン・ボナパルトによってフランスに送られた美術品のイタリア送還にも尽力しました。

『アモールとプシュケ』は、国内最高の彫刻家の地位に登りつめた30代なかばの作品です。

ナポレオン軍がイタリアに侵攻してくる少し前、1793年のことでした。

『絶頂美術館』(マガジンハウス)では『アモールとプシュケ』について、

ヴィンケルマンの教えに従い、ギリシア彫刻を忠実に模倣して理想化された人体を描きつつ、古代彫刻には見られない繊細なポーズと甘美な哀愁を加味して、絶妙な味わいをかもし出している。

西岡文彦(著). 『絶頂美術館』. マガジンハウス. p.96.

とあります。仰る通りですね。

ヴィンケルマンとは、『ギリシア芸術模倣論』『古代美術史』を著した18世紀ドイツの美術史家、ヨハン・ヨアヒム・ヴィンケルマン( Johann Joachim Winckelmann, 1717年12月9日-1768年6月8日)です。

作品の来歴

ルーヴル美術館の説明文によると、『アモールとプシュケ』の注文者はジョン・キャンベル。

ナポレオン・ヴォナパルトの義兄弟で、ナポリ王となったジョアシャン・ミュラ( Joachim Murat, 1767年3月25日-1815年10月13日)に購入され、1808年にナポレオンへ。

1809年3月にルーヴル美術館に運ばれたそうです。

1809年4月10日から1822年までの一時期、コンピエーニュに在りましたが、1822年11月13日にルーヴル美術館に戻りました。

制作風景?『工房のアントニオ・カノーヴァと画家のヘンリー・トレシャム』 1790年頃 ヒュー・ダグラス・ハミルトン

『工房のアントニオ・カノーヴァと画家のヘンリー・トレシャム』 1790年頃 ヒュー・ダグラス・ハミルトン
『工房のアントニオ・カノーヴァと画家のヘンリー・トレシャム』 1790年頃 ヒュー・ダグラス・ハミルトン

引用元:『工房のアントニオ・カノーヴァと画家のヘンリー・トレシャム』

英国で活躍した画家ハミルトンは、しばしばローマのカノーヴァのアトリエを訪れました。

カノーヴァの肖像画や、『アモルとプシュケ』(アイルランド国立美術館蔵)も描いています。

ルーヴル美術館にある『アモールとプシュケ』の絵画

『プシュケーとキューピッド』( Psyché et l’Amour, dit aussi Psyché recevant le premier baiser de l’Amour. ) 1798年 フランソワ・ジェラール ルーヴル美術館蔵

『プシュケーとキューピッド』 1798年 フランソワ・ジェラール ルーヴル美術館蔵
『プシュケーとキューピッド』 1798年 フランソワ・ジェラール ルーヴル美術館蔵

引用元:『プシュケーとキューピッド』

ルーヴル美術館公式サイト(お出掛け前には最新状況をご確認ください)

ルーヴル美術館公式サイト『プシュケーとキューピッド』/ 展示場所:シュリー翼、934展示室

フランソワ・ジェラールもカノ―ヴァの姿を描いています。他にジョアシャン・ミュラ、皇帝ナポレオン、レカミエ夫人の肖像画が有名です。

『アムールとプシュケ』( L’Amour et Psyché ) 1817年 フランソワ=エドゥアール・ピコ ルーヴル美術館蔵

『アムールとプシュケ』 1817年 フランソワ=エドゥアール・ピコ ルーヴル美術館蔵
『アムールとプシュケ』 1817年 フランソワ=エドゥアール・ピコ ルーヴル美術館蔵

引用元:『アムールとプシュケ』

ルーヴル美術館公式サイト(お出掛け前には最新状況をご確認ください)

ルーヴル美術館公式サイト『アムールとプシュケ』/ 展示場所:ドゥノン翼、702展示室

ジャック=ルイ・ダヴィッドらに学んだフランス出身の画家です。

ハミルトン、ジェラール、ピコの作品も掲載しています。( hanna_and_art’s blog 内の記事です)

主な参考文献
  • 大友義博(監修). 2014-10-12. TJMOOK 『一生に一度は見たい ルーヴル美術館BEST100』. 宝島社.
  • 西岡文彦(著). 『絶頂美術館』. マガジンハウス.
  • アンリ・ロワレット(総監修). 2005-2-6. 『別冊太陽 ルーヴル美術館』. 平凡社.
よかったらシェアしてください
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次