バロックの芸術家ベルニーニが制作した枕とマットレスでまどろむ「ボルケーゼのヘルマフロディトゥス」と、同じルーヴル美術館のコレクション「ヴェッレトリのヘルマフロディトゥス」の画像を掲載。

『眠れるヘルマフロディトゥス』 ( Hermaphrodite endormi )

引用元:『眠れるヘルマフロディトゥス』 Sailko CC-BY-3.0
『眠れるヘルマフロディトゥス』(ボルケーゼのヘルマフロディトゥス)( statue ; Hermaphrodite endormi )
展示場所:シュリ―翼、348展示室
艶めかしい背中からヒップのラインですね。
まどろむ「女性」像の名称は「ヘルマフロディトゥス」。
日本語では『眠れるヘルマフロディトゥス』、『まどろむヘルマフロディトゥス』、『ボルケーゼのヘルマフロディトゥス』というタイトルになっています。
ヘルマフロディトゥス(ヘルマプロディートス)は、神話に出てくる美の女神アフロディーテと、伝令の神ヘルメスの間に生まれた息子です。
それなら女性と見間違えても不思議ではない美貌…ですが、よく見ると像には乳房があります。

引用元:『眠れるヘルマフロディトゥス』 Sharon Mollerus CC-BY-2.0
ヘルマフロディトゥスは男性ですから、当然男性器もありますね。
両性具有です。
ヘルマフロディトゥスは母親アフロディーテから受け継いだ美貌が災いし、彼に恋したニンフ・サルマキスに強引に迫られてしまいます。
そして合体してしまった結果、ヘルマフロディトゥスには乳房と陰茎があるのです。
ボルケーゼ美術館、ルーヴル美術館や大英博物館ほどには名前を聞かなくても、収蔵品は「これ見たことある」と思うものばかり。シリーズ中では一番好きな巻かな。読んで損はない一冊です。
17世紀、ヘルマフロディトゥスの像を発見
ボルケーゼ枢機卿とベルニーニ
このヘルマフロディトゥス像は、17世紀初めにローマのディオクレティアヌスの浴場付近で発見されました。
紀元前2世紀、ヘレニズム文化の香り高いこの彫刻は、ローマ時代に作られたギリシャ彫刻のコピーです。
所有者となった枢機卿シピオーネ・ボルケーゼは、バロックを代表する天才芸術家ジャン・ロレンツォ・ベルニーニに命じ、この像のための枕とマットレスを制作させました。

引用元:枢機卿シピオーネ・ボルゲーゼボルケーゼ美術館蔵 _ Sailko _ CC-BY-3.0

引用元:ベルニーニ自画像
以前のルーヴル美術館の公式サイト・日本語版では、「1608年ローマのディオクレティアヌスの浴場付近にて発見された」となっており、『一生に一度は見たい ルーヴル美術館BEST100』(宝島社)でも、発見は1608年となっています。
現在のルーヴル美術館公式サイトでは、発見は「1618年」となっています。
また、現在の公式サイトでは、ダヴィッド・ラリク( D. Larique )がヘルマフロディトゥス像修復を、ベルニーニが枕とマットレスをを手掛けたのは1620年となっています。
ボルケーゼ一族が所有していたこのヘルマフロディトゥス像は、1807年、ルーヴル美術館に収蔵されました。
以前あった日本語版(『この作品の近代史』の項)を参考までに挙げておきます。
1619年スキピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿は、バロック時代のイタリア人彫刻家ベルニーニに古代の彫像を寝かせるためのマットレスの制作を依頼した。同じ年にダヴィッド・ラリクは、ヘルマフロディトス自体の修復を手がけた。この作品は、1807年ナポレオンが彼の義理の兄弟に当たる、カミロ・ボルゲーゼ公から一連のボルゲーゼ・コレクションを購入した後、ルーヴル美術館に収集された。ルーヴル美術館のヘルマフロディトスは、最も有名であったが、他の3体の古代の複製彫刻がこの作品と比較される事もあった。ルーヴル美術館に保管してあるヴェッレトリのヘルマフロディトス、フィレンツェ、ウフィツィ美術館のもの、そして未だにローマのボルゲーゼのヴィラに保管してあるものがそれに当たる。
(ルーヴル美術館の『眠れるヘルマフロディトゥス』の解説一部抜粋)
ヴェッレトリの『眠れるヘルマフロディトゥス』
上の引用文中に出てきた「ヴェッレトリ( Velletri, イタリア )のヘルマフロディトス」はこちらです。

引用元:『眠れるヘルマフロディトゥス』 soham_pablo CC-BY-2.0
『眠れるヘルマフロディトゥス』(ヴェッレトリのヘルマフロディトゥス)( statue )
展示場所:ルーヴル美術館ランス別館
公式サイトによると、この像の発見は1795年。
「ボルケーゼのヘルマフロディトゥス」とほぼ同じ時期のローマン・コピーです。
像とマットレスと枕

引用元:『眠れるヘルマフロディトゥス』 Sailko CC-BY-3.0


引用元:『眠れるヘルマフロディトゥス』 Marie-Lan Nguyen

引用元:『眠れるヘルマフロディトゥス』 Gautier Poupeau CC-BY-2.0
大理石でできているようには思えない、寝心地の良さそうな枕とマットレスですね。
絵画『サルマキスとヘルマフロディトゥス』( Salmacis et Hermaphrodite ) 1600年代前半 フランチェスコ・アルバーニ ルーヴル美術館蔵

ルーヴル美術館公式サイト『サルマキスとヘルマフロディトゥス』( Salmacis et Hermaphrodite )
展示場所:ドゥノン翼、716展示室
泉のヘルマフロディトゥスを見て恋をするサルマキス。
フランチェスコ・アルバーニは、ボローニャ派の画家カラッチ一族の元で学びました。
1600年代初め、アンニ―バレ・カラッチの助手として旧知のグイド・レーニとともにパラッツォ・ファルネーゼ(ファルネーゼ宮)の壁画制作に携わりました。

- 大友義博(監修). 2014-10-12. TJMOOK 『一生に一度は見たい ルーヴル美術館BEST100』. 宝島社.
- アンリ・ロワレット(総監修). 2005-2-6. 『別冊太陽 ルーヴル美術館』. 平凡社.